就職活動で内定が取れる人の自己PR。あえて弱みを出す事で採用されるケースもある

突然ですが、想像してみて下さい。あなたは企業の面接官です。

今日、面接にやってきた学生は、履歴書を見る限り非常に優秀で、ぜひとも欲しい人材です。

あなたが「自己PRをお願いします」とその学生に伝えると、学生は雄弁に語り始めました。

ーー

「私は高校時代、柔道部に所属しておりました。
私は厳しい練習にも耐えられる根性があり、努力家であり、結果を出せる人間です。
その証拠として、県大会で優勝した実績もあります。

文武両道で、高校時代は常に成績上位。
大学受験でも、難関の早稲田大学に合格しました。

大学ではテニスサークルに所属し、サークルリーダーとして100人のメンバーをまとめました。
バイトでもバイトリーダーを任命され、リーダーシップがある人間だと自負しています。
よろしくお願いします」

ーー

さて、ここで質問です。あなたは、この学生に内定を出しますか?

基本スペックは高いですし、公式試合での実績もあります。運動部出身で、根性がある努力家ならば、厳しい労働にも耐えて結果を出してくれるでしょう。

若干、完璧超人な所が気になりますが、志望動機やグループワークなどで気になる点が無ければ、内定を出すでしょう。

続いて、同じ早稲田大学の学生でも、あまり優秀でない人が面接に来ました。彼の自己PRは下記の通り。

ーー

「私は高校時代、帰宅部でした。
中学時代はサッカー部でしたが、厳しい練習が嫌になり、高校時代はダラダラ過ごしてしまいました。

アルバイトはしていましたが、当時付き合っていた彼女に貢いでしまい、まったく貯金が出来ませんでした。

大学時代は麻雀にハマり、講義をサボって仲間と麻雀をしていました。

そのせいで、3年時に留年しそうになり、慌てて友達にノートを貸してもらい、死に物狂いで単位をかき集めました。

私は自堕落で、いい加減で、騙されやすい性格です。早稲田大学に入学できたのは、私の人生において最大の奇跡です。

リーダーシップもありませんし、何か凄い事を成し遂げた実績もありません。

しかし、私は何だかんだ先輩に気に入られ、後輩には慕われるタイプです。

なぜなら、私は助けてもらったら、必ずお礼をする人間だからです。
恩義を大切にする事だけは、忘れないよう心がけています。

もし私が傲慢で、感謝もしない、友達から嫌われる人間だったならば、今頃、留年をしてドロップアウトしていたでしょう。

私がこうして就職活動を出来ているのも、私を助けてくれた優秀な友人達のおかげです。彼らには感謝しています。

えっと…あとは、犬が好きで、実家で柴犬を飼っています。

しばらく家に帰っていないので、私の顔を忘れられて、毎回吠えられてしまう事が、最近あった一番悲しい出来事です。よろしくお願いします」

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さて、あなたはこの学生に内定を出しますか?

かなり判断に悩むと思います。

自己PRと言えば、普通は自分の強み・弱みを語りつつ、最終的に「私は会社に貢献できる人材である」という事をアピールするものです。

しかし、彼は自分のことを「自堕落」「リーダーシップが無い」と言い放ち、挙句の果てに、聞いてもいないのに実家で柴犬を飼っているというプライベートな情報を付け加えました。

これといった実績もなく、PRした事といえば『私は恩義を忘れない人間だ』という事くらいでしょうか。

最初の学生に比べると、あまりにもPRポイントが少ないですね。

就職面接における自己PRとしては、普通に考えれば失格です。

しかし、なぜでしょう。あなたは彼に内定をあげたくて仕方ありません。

自分の部下として配属されたら、まず突っ込みを入れたいですし、そのゆるい雰囲気は魅力的で一緒に働きたいと思ってしまいます。

また、自分の強みをメインに語る学生が多い中、彼のような正直過ぎる人物は、非常に印象に残ると思います。

柔道部の学生と、自堕落だが情に厚い彼。どちらが内定を取りやすいか?

もちろん柔道部の学生が内定を取りやすいのは言うまでもありませんが、実は自堕落な彼も、内定が取りやすい学生に分類されます。

なぜ、あのような型破りな自己PRなのに内定が取れるのか?

今回は、面接における自己PRの秘密に迫ります。




柔道部の学生は論理。自堕落な彼は人柄で高評価を得ている

人は、人の喋った言葉を判断する時に、論理と人柄、2つの側面から評価します。

柔道部の彼は、論理の面で非常に優秀な自己PRでした。

彼のPRを分解してみましょう。第一段落の論理はこの通り。

  • 1:私は根性があり、努力家でもある。
  • 2:なぜなら、柔道部の厳しい練習に耐えたからだ。
  • 3:その客観的な証拠として、県大会に優勝した実績がある。
  • 結論:私は根性があり、努力家な人間である

続いて第二段落はこんな感じ。

  • 1:私は文武両道である
  • 2:その証拠として、難関の早稲田大学に合格した
  • 3:柔道部で結果を出している事は既に証明済み
  • 結論:私は文武両道な人間である

そして、これらの結論は『私は会社に利益をもたらす人間である』という結論につながっています。

根性があり努力家な人間 → キツい仕事もしっかり頑張ってくれるだろう。

文武両道な人間 → 体力だけでなく知力もある優秀な人材なら、会社の重要な戦力になるだろう。

このような証明がなされているので、面接官も積極的に内定を出すでしょう。

では、一方で自堕落な彼はどうでしょうか。彼の自己PRを論理に当てはめると、

  • 1:厳しい練習が嫌で、高校では帰宅部を選んだ
  • 2:彼女に騙され、蜜がされた
  • 3:麻雀にハマり、留年しそうになった
  • 結論:私は自堕落で、いい加減で、騙されやすい人間である

なんと、いかに彼がダメな学生かを証明してしまいました。

自己PRでは、自分の弱みを伝える事も重要ですが、これでは弱みが大きすぎます。

自堕落でいい加減で騙されやすい人間である → 雇っても仕事をサボったり、取引先に騙されたり、いい加減な仕事をしたり、嫌になってすぐ辞めてしまうだろう。

面接官からすれば、この証明がなされた時点で落としたい所です。論理的に見れば、彼を雇うメリットは会社にはありません。

しかし、人柄の面で評価すると、その様相は一変します。

他の学生が必死に「自分は優秀である」と証明する中、バカ正直に自分を「ダメなやつである」と伝える様は「自分を偽らない正直者である」と評価できます。

差別化という点でも高評価

自堕落な彼は、他の学生との差別化にも成功しています。

面接官を経験した人なら分かると思いますが、自分の優秀さをPRする人があまりにも多いので、ウンザリしてしまいます。

誰しも彼しも、やれリーダーシップだ、バイトリーダーだ、努力できる人間だ…

そんな「私は立派な人間アピール会場」という様に嫌気がさしてしまいます。そして思うのです。

「どうせ皆、この日のために嘘を繕ってきたのだろう」と。

正直いって、就職活動の面接なんて茶番も良い所ですが、皆さん大人なので建前と本音を分けて面接をしています。

そんな中、バカ正直に、自分にマイナスになる情報を堂々と伝える馬鹿者が現れたら、どう思うでしょうか?

少なくとも、印象には残るでしょう。他のありきたりな学生よりも、少しだけ魅力的に見えるかもしれません。

嘘偽りの蔓延る面接会場で、彼だけが本当の自分を伝えているようにすら見えます。

「騙されやすい」という性質も、裏を返せば「素直で人を信じる真っ直ぐな人である」という証明になります。

そう思い始めると、彼が唯一PRした長所『私は恩義を忘れない人間である』という点にも信憑性が妙に出てきました。

いかがですか?

自堕落な彼が、他のありきたりな学生よりも、少しだけ魅力的に感じたのではないでしょうか。

彼は論理的な評価では、柔道部の学生にはひっくり返っても敵いません。しかし、人柄を評価すると、驚くべき事に柔道部の学生にはない独特の高評価がつくのです。

人は弱みのある人物に好感を抱く

人間は弱みがある人物に、非常に好感を抱きやすいです。

完璧な人には近寄りがたいですが、一つでも短所や失敗談があれば、グッと親近感を覚えるもの。

自堕落な彼は、とにかく弱みを精一杯アピールしました。

たどたどしく、バカ正直に弱みを話し、最後には関係のない実家の犬の事まで話してしまう初々しさは、汚い大人になった面接官にとって新鮮に感じたでしょう。

論理的に見れば、明らかに彼の戦略は誤りですが、だからこそシュールで笑えてしまうし「しょうがない奴だ」と声をかけたくなります。

会社は強い人材を雇いたいですが、それだけですと、息苦しい職場になってしまいます。多くの人に愛される『愛されキャラ』もまた、会社に必要な人材なのです。

多様性の面でも、優秀な人ばかり集めると凝り固まった発想しか出てきません。彼のように、よく言えば正直者、悪く言えば馬鹿者を入れたほうが、発想を逆転した革新的な意見が出るかもしれません。

そのため、どの会社も採用において「人柄枠」「ユニーク枠」ともいうべき、人柄で採用する枠があるのです。

「優秀枠」では柔道部の学生には勝てませんが「人柄枠」であれば、自堕落な彼にも勝機があると言えるでしょう。

『相手の土俵で戦わず、自分にとって有利な土俵で戦う』

これを無意識に出来る人こそ、優秀でなくても内定が出る人の特徴です。

弱みだけを過剰にPRするのはダメですよ

人は弱みがあると好感を抱かれやすい、と言いましたが、弱みだけPRするのはダメです。

「俺はサボりまくりのダメダメ男でーす!」と開き直っても、誰も好感を抱かないし「私はここがダメ、あれもダメ」と自虐ばかりでは、聞いていて気が滅入ります。

まさにこれ↓

自虐も行き過ぎると、構ってちゃんみたいでウザいですからね。

一番良いのは【弱い所もあるけれど、こんな強みもありますし、一所懸命がんばります】という腰の低い、謙虚な姿勢を聞き手に印象付ける方法です。

どこまで弱さをPRするか、さじ加減は難しいですが、上手く使えば強力な武器になるので、ぜひ活用して下さい。

心理学を応用して内定を手に入れよう

今回の自己PR戦略、いかがでしたか?

もちろん、弱みを出しただけで内定が出るほど就職活動は甘くはありません。

しかし、ありきたりな自己PRで優秀な人の下位互換になるくらいなら、この人柄枠を狙って弱さをPRする戦略を取ると良いでしょう。

こういった発想は、心理学やセールスライティング(広告のための文章の書き方)を学ぶと、出来るようになります。

このように心理学を応用して相手への印象をコントロール出来れば、採用の場面のみならず、あらゆるビジネスで優位に立てますよ。