どうも!個人事業主から法人化して3年目、クロネコ屋です。
突然ですが、フリーランス界隈でよくある話が
「節税のために法人化しました!」
という話。
どういう事か、分かりやすく説明すると…
個人事業主
最大所得税率45%+住民税10%+事業税とか
=ザックリ50%が税金で持ってかれる
法人
最大実効税率33%
=どんなに稼いでも税率は33%で打ち止め
法人化した場合の個人の役員給与
給与所得控除があって、お得。
社会保険の負担(厚生年金等)はデメリットになる。
まぁ、こんな感じで
『最大で半分近くを税金で持っていかれる個人事業主より、法人にして所得を分け合って実効税率を33%以下にした方が節税になる』
というのが法人化による節税のスキームです。
ただ、節税目的の法人化には穴があって、一見すると所得を分散することによって税金が安くなるんですけど、
「最終的に法人のお金を個人に移す時は、どうすればいいの?」
という視点が抜け落ちてるんですね。
まぁ私の事ですが…
法人化した当初は「役員報酬は100万以下でいいや」とテキトーに決めたもんだから、法人にえらい金が貯まってしまいました。
その結果、退職金では到底、回収しきれない金が法人に残る事に\(^o^)/
今回は主に『法人から個人への資産移し』『過大な役員報酬』について法人化の失敗談(?)を語ります。
過大な役員報酬の罠
「役員給与で法人の利益を全部吸い取ればええやん?」
と思う方もいるでしょう。
例えば、年間利益が3600万なら、極端な話、役員報酬を月300万にすれば法人の利益は0円。
個人に税金はかかりますが、法人税は0です。
ここまで極端にしなくても、例えば役員報酬を月200万にすれば
法人:1200万
個人:2400万
といった感じで分散出来ますね。
しかし、問題点が1つあります。
役員報酬を上げすぎると「過大な役員報酬」と税務署に突っ込まれて、最悪の場合、役員給与が損金にならず、法人と個人にダブルで税金がかかる二重課税をくらうリスクが出てくるのです。
ちなみに、いくら以上の役員報酬だと過大なの? という疑問に関しては、
(1) 実質基準
(2) 形式基準
この2点をあわせて決定します。
形式基準は、株主総会などで決められた金額以上を出すなって話なんで1人社長には関係なし。
問題は、実質基準の方です。
実質基準は
① 役員の職務内容
② 会社の収益
③ 会社の他の社員に対する給料の支給状況
④ 同業種、同規模の会社の支給状況
これらを基準に、高いか低いか決めるのですが、ぶっちゃけ詳しい算定式などは一切なく、税務署が「高すぎちゃう?」と思ったら即突っ込んでくるというリスク要素になります。
もともと、過大な役員報酬は『退職金水増しのために、意味もなく役員報酬をあげる』ケースや『働いてない妻に月100万あげてた。明らかにおかしいやろ…』といったケースを否定するために設定されているものだと思います。
ただ、過去の名古屋地裁で「売上が上がったから、それにあわせて役員報酬も上げたのに過大な役員報酬として否認された」というケースもあり、非常に面倒くさいリスクになっています。
下記のリンクで題材になっています。平成6年なので20年以上前の判例になります。
同業種、同規模の会社の役員報酬と比較…って、その比較基準もおかしいですよね。
もう、ここらへんはツッコミだしたらキリがないので割愛しますが、とにかく『役員報酬は下げても文句言われないけど、上げると過大な役員報酬のリスクが出てくる』というのもミソです。
「売上が2倍になったから役員報酬も2倍にした」
という理屈を出しても
「同業他社に比べて高すぎるからダメ」
とか言われるんですよ。意味不明ですよね。
国が社長の給料に口出しするんかい!って話です。
個人の方が最大税率は多いんだから、個人でいくらとっても良いのでは? と思いますが、どうしても税金二重取りを狙って突っ込んでくるようです。
法人化して適当に役員報酬をきめて、後で「やっぱ個人にお金残そう」と思って役員報酬をあげようと思っても、このリスクがあると気持ちよく上げられないですね。
法人化の出口は3つ
色々考えたのですが、法人化の出口は、3つあります。
1:法人に残ったお金は、役員退職金で回収してEND
2:M&Aして株式譲渡(税率20%)でイグジット
3:不動産や株式を法人で購入してダラダラ役員報酬で回収
1番は、恐らく誰もが最初に考える出口ですね。
役員退職金は『役員報酬(月収)×勤続年数×功績倍率3倍』まで出せるので、役員報酬100万円:勤続10年なら『100万×10×3=3000万』の退職金が確保できます。
法人に残っているお金が3000万なら、無事回収出来ます。
2番目の出口は、ベンチャー企業に多いですね。
株式ごと会社を譲渡してイグジット。税金は20%だけ。法人の実効税率33%と合わせると53%ですが、M&Aする時に役員退職金を出せばもうちょい下がるのでは?
M&Aイグジットに関しては、まだ理解が浅いので詳しくはわからないです。
ただ、某DeNAの方のように、シンガポールで受け取って20%の税金を0にするなど色々スキームがあるようです。ここらへんはベンチャー界隈が詳しいかも。あんまりアフィリエイターでこういうスキームについて話してるのは聞かないです。
3番めは、法人に残ったお金を投資に回してお金でお金を稼ぎつつ、それを役員報酬で可能な限り長く回収する…というコース。
法人にお金を残した場合、節税した分だけ投資に回せますから、これも結構スタンダードかもしれません。
ただ、不動産事業などであれば問題ありませんが『1億円を米国株に突っ込んで配当年400万売上はそれだけ。役員報酬年400万で回収って出来ますか?』と聞いた所、配当の場合は難しいかも…? とのこと。
仮にアフィリエイトが全部ポシャっても、配当で利益をあげて役員報酬に回して勤続年数稼いで退職もありじゃね? と思ったのですが微妙かもしれません。
配当を役員報酬に回すっていうのは難しいのかも。
他にも出口はあるかもしれませんが、今の所、M&Aか退職金で回収が一番現実的ですね。
ただ、退職金は計算式がほぼ決まっており、それ以上出すと否認されるリスクが高いので、法人にお金が残りすぎてると回収しきれないので注意です。
回収しきれない部分は、法人解散時、配当所得になりガッツリ最大50%まで課税されます。そこは分離課税20%じゃないんかい! と切れそうです。
『過大な役員報酬』があるので、法人にお金を残さないようにしようとしても、役員報酬を上げられないジレンマにハマると、もうどうしようもないです。
まとめ:節税目的で法人化するなら役員報酬にガチ注意
フリーランス(個人事業主)ですと、税金は本当に高いですよね。
でも、個人事業主は税金さえ支払ってしまえば、後は個人のお金です。自由に使えます。
法人化すれば節税は出来ますが、法人に残ったお金は自由に使えませんし、個人に移すのは色々大変です。
下手すると二重課税で税率60%とかになってしまうので、必ず出口を考えてから法人化してください。
税理士さんに相談する時は、売上が出なくなって個人成りする時はどうするか? という点も合わせて打ち合わせしておいた方がいいです。
税理士さんは節税メリットは推しますが、いざ売上が落ちた時の個人成りへの出口まで言及はしてくれないです。もし、やってくれるなら当たりかも?
「税金払いたくないし、役員報酬は少なくていいや」
なんて適当な決め方をしていると、どんどん法人にお金がたまって、いざ売上が落ちて「維持費もかかるし、法人やめようかな?」という時に困った事になりますよ。
個人的には、利益の半分くらいは個人で取った方が良いと思います。
フリーランスから法人化すると、こーゆー事で頭を悩ませるから、利益2000万以下なら法人化しなくていいんじゃね? と思います。
安定して年3000万を超えてくるようなら、消費税の免税メリットもありますし、やる価値はあると思います。
その時は、必ず役員報酬を高めにしておきましょう。